本の覚書

本と語学のはなし

終わりよければすべてよし/ウィリアム・シェイクスピア

 シェイクスピアの登場人物の中で唯一思索する女性とも言われるヘレナが、逃げる若き伯爵を、知略を用いて自分の夫とするまでを描いた作品。
 ボッカチオの『デカメロン』を下敷きにしているようだが(元を辿れば、創世記にあるユダとタマルの挿話に行き着くように思える)、材源に比してシェイクスピアの描くロシリオン伯爵は、どうにも本性卑劣なところがあって、とてもヘレナの愛の対象として相応しいようには思えない。
 彼女の真の目的が地位と財産だけであったのなら話は別であるが、果たして本当に「終わりよければすべてよし」と言えるのかどうか? やはりこれも問題劇なのだろう。