- 作者:アシジの聖フランシスコ
- メディア: 文庫
フランシスコ会の会則が二つある。「勅書によって裁可された会則」と「勅書によって裁可されていない会則」である。前者がわずか十五ページであるのに対して、後者は五十二ページ。後者を刈り込み、前者へとまとめ上げた過程を、専ら法的、技術的な問題として捉えるべきであるという説もある。例えば、『アッシジのフランチェスコ』 の著者、川下勝は『フランシスカニズムの流れ』の中で、二つの会則の間に断裂を想定することに否定的見解を示し、「勅書によって裁可された会則」は公的文書の法的表現及び形式に合わせただけであり、フランシスコの精神そのものは生きていると言っている。
一方で、あまりに大胆な大鉈の振り上げ様に、既にフランシスコの意に反する動きが始まっていたのであり、フランシスコが会の一線から退いたのは単に健康上の理由からだけではないと解釈する向きもある。
さて、どちらが正しいのだろうか。いずれにしろ、早晩フランシスコ会は分裂含みの発展をしていくことになるのだが。