- 作者:スピノザ
- 発売日: 1955/01/05
- メディア: 文庫
若い頃に書かれたものだが、その内容は『小エチカ』というべきもので、既に『エチカ』の論点は大概盛り込まれている。『短論文』の構想はそのまま、厳密な幾何学的形式を伴って『エチカ』へと発展したのである。この発展的解消のために役目を終えた『短論文』は、ラテン語原典が散逸し、遺稿集にも収められぬまま、オランダ語訳写本の発見まで存在すら忘れ去られることとなった。
出版のために推敲されてはいないし、スピノザは最初からスピノザであったとはいえまだ過渡的な思想を残しているし(精神と肉体を繋ぐ動物精気とか)、分かりにくい部分もあるのだけど、幾何学的な秩序によってではなく普通の文章で書かれている『短論文』は、『エチカ』入門として最適の一冊である。