- 作者:鈴木 淳次
- 発売日: 2009/08/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
平仄表にも疑問が残る。第一に、韻は原則として平声で踏むので、作詩の実際には不要と見做されたのか、仄韻の場合が載っていない。第二に、各句の一字目は平声、仄声のいずれでもよいと思うのだが(私の持っている漢和辞典の表ではそうなっている)、この本では平声と確定されている場合が多々ある。例えば、七言絶句、仄起式。
△●○○●●◎ ○は平声、●は仄声、△はどちらでもよい
○○△●●○◎ ◎は平韻
○○△●○○●
△●○○●●◎
ところが、同じ課の練習問題には、これと異なる形の詩が出てくる。
罷● 釣● 帰○ 来○ 不● 繋● 船◎
江○ 村○ 月● 落● 正● 堪○ 眠◎
縦● 然○ 一● 夜● 風○ 吹○ 去●
只● 在● 蘆○ 花○ 浅● 水● 辺◎
転句の一字目が仄声となっていて、この本の表とは違っているのだが、そのことについて説明は一切ないようだ。おそらく、絶対に孤平(平声が仄声に挟まれること)を避けるための安全策として、作詩の便を図った表なのだろうと思われるが、そうだとすれば実に窮屈だし、私のように専ら鑑賞のために規則を知りたい者には全然ありがたくない。
現代の日本で漢詩を作る人たちの投稿作品が載っているのは面白いが、できれば著者自身の作詩過程をもっと具体的に示してほしくもある。