本の覚書

本と語学のはなし

講師不足

νῦν δ’ εἶμι Φθίηνδ’, ἐπεὶ ἦ πολὺ φέρτερόν ἐστιν
οἴκαδ’ ἴμεν σὺν νηυσὶ κορωνίσιν, οὐδέ σ’ ὀΐω
ἐνθάδ’ ἄτιμος ἐὼν ἄφενος καὶ πλοῦτον ἀφύξειν. (1.169-171)

わたしはもうプティエへ帰る、船団を率いて国許に引き上げる方が遥かにましだからな。恥辱を受けながらこの地に留まり、あなたのためにせっせと富を貯えてやるつもりはないのだ。(上p.19)


 アキレウスは総大将アガメムノーンにこう言い放つ。アガメムノーンはギリシア連合軍のトップではあるけど、決して全土を支配する無二の王ではない。
 松平訳は散文である。固有名詞の長母音を忠実に再現しない(例えばアキレウスの故国は、正しくはプティーエーである)。語調を整えるだけの形容詞は訳さない(例えば「船首の曲がった」と訳されるべきκορωνίσινは、ここでは無視されている)。しかし、少し煩わしくても、後者は訳出してほしい。


 よく見たら、春期講習の講師の中に、ふだん現場で教えることのない偉い人の名前があった。クラス授業の講師不足は本当に深刻らしい。来年度、高校生のクラスが減るのもその影響なのだろうか。パート講師にとっては、個別授業よりクラス授業を選択するメリットはほとんどない。仕方のないことだ。