本の覚書

本と語学のはなし

桐壺「はじめました」


 とうとう『源氏物語』を始めた。小学館の新編日本古典文学全集第20巻。まだ最初の大段落(大きい段落には番号と見出しがついている)を読んだだけだが、『枕草子』よりも明晰な文章であるという気はする。

 父の大納言は亡くなりて、母北の方なむいにしへの人のよしあるにて…(桐壺1)

 父の大納言は亡くなって、母の北というのが、旧家の出の、教養の身に付いた人で…


 桐壺の更衣の両親の説明だが、注釈によれば「よし」は二流の人々の人品・教養・風情のことで、一流の人々の場合には「ゆゑ」を用いるという。古典は本文だけでなく、注を読むのも楽しい。