本の覚書

本と語学のはなし

枕草子「風」

 八、九月ばかりに、雨にまじりて吹きたる風、いとあはれなり。雨のあし横ざまに、さわがしう吹きたるに、夏とほしたる綿衣のかかりたるを、生絹すずし単衣ひとへぎぬ重ねて着たるも、いとをかし。この生絹だにいと所せく暑かはしく、取り捨てまほしかりしに、いつのほどにかくなりぬるにかと思ふもをかし。(188 風は

 八月か九月ごろに、雨にまじって吹いている風は、たいへんしみじみとした感じである。雨足が横向きに、騒がしく吹いているので、夏中通して着た綿入れの着物の、何かに掛けてあるのを、生絹の単衣を重ねて着ているのも、とてもおもしろい。この生絹さえ、ひどく窮屈で暑苦しく、とり捨ててしまいたかったのに、いつの間にこんなに涼しくなってしまったのだろうと思うのも、おもしろい。


 今年の最初の読書は『枕草子』。最初に読んだ段からの引用である。
 『枕草子』は来月上旬には読了する予定。その後は『源氏物語』を中心に。時々、長すぎない他の古典作品や道元の著作を挟む。