本の覚書

本と語学のはなし

永平初祖学道用心集

【原】参学人、且半途始得、全途莫辞。祈禱祈禱。
【読】参学の人、且く半途にして始めて得たり、全途にして辞すること莫れ。祈禱、祈禱。
【訳】参学の人よ、学道という道は、半分の道のりまで来てはじめて、やっと〔真実の道とは何かが〕分かりはじめるものであり、また、すべて学び終えたと思っても、それで満足して決して辞めてしまってはいけない道である。祈禱、祈禱。(『全集14』70頁)


 半分まで来なくてはそれが真実の道かどうかも分からない、すべて終えてもそこが終着点ではない。学問もまたそうだろう。
 ただし、「且半途始得、全途莫辞」は「且く半途なるも始めより得たり、全途に辞すること莫れ」という読みも可能で、その場合、「仏道は途中であっても〔修業が証りであるから、その証りを〕はじめから得ている。〔ゆえに、〕その全行程において〔証りとしての修業を〕やめてはいけない」という意味になる(補注87,88頁)。


 道元の研究に打ち込むか伝統工芸か何かの職人になっていれば、もう少しまともな人間になっていただろうと思う。
 学生時代に東洋哲学を専攻しなかったことはまあ仕方ない。まだ道元に出会ってすらいなかったのだ。しかし、職人には子供の頃から憧れも感じていたし、適性を信じて疑いもしなかったのに、一度もその道に入ろうとしたことがない。大きな間違いではなかったろうか。