本の覚書

本と語学のはなし

Revenge of the Lawn


 英米文学の原典講読、次は、Richard Brautigan『Revenge of the Lawn』(Canongate)に挑戦する。参照する翻訳は、リチャード・ブローティガン『芝生の復讐』(藤本和子訳,新潮文庫)。


 英語に特別難しい要素はないように見える。しかし、訳者のあとがきには「それまでのアメリカ文学にはなかったような大胆な文体」で書かれた短編小説集だとある。それがどういう意味なのかまだ分からないが、用心してかかるべきだろう。
 例によって、冒頭部分の原文と翻訳を対照させてみる。

My grandmother, in her own way, shines like a beacon down the stormy American past. She was a bootlegger in a little county up in the state of Washington. She was also a handsome woman, close to six feet tall who carried 190 pounds in the grand operatic manner of the early 1900s. And her specialty was bourbon, a little raw but a welcomed refreshment in those Volstead Act days. (p.1)

 わたしの祖母は、彼女なりに、波乱のアメリカ史に狼煙のろしのごとく光を放つ存在である。彼女はワシントン州の小さなカウンティで酒の密造をやっていた。体重は一九〇ポンド、身長は六フィート近くあり、一九〇〇年代初頭のグランドオペラ風に身をこなし、堂々たるものだった。彼女の専門はバーボンで、それはやや熟成が足りないものだったが、かのヴォルステッド禁酒法の時代には喜ばれたものだった。(11頁)