本の覚書

本と語学のはなし

Bel-Ami


 結局ブルトンの『ナジャ』は面倒臭くなって、モーパッサンの『ベラミ』を後半から再開することにした。岩波文庫の杉捷夫訳は下巻に入る。

Mais il avait confiance en sa fortune, confience en cette force de séduction qu’il sentait en lui, force vague et irrésistible que subissaient toutes les femmes. (p.211)

しかし、彼は自分の幸運を信じていた。自分の身うちに感じている人を惹きつける力、あらゆる女がその影響を受けずにはいなかった力、正体はつかめないが抗しがたい例の力、その力を彼は信頼していた。(下5頁)


 この人は、「ce / cette+名詞+関係代名詞〜」という構文が来ると、ほとんど機械的に下から訳し上げ、名詞の前に「例の」を付けて仕上げる癖がある。「例の」は強すぎるんじゃないかといつも思う。