本の覚書

本と語学のはなし

Nadja


 André Breton『Nadja』(folio)を始める。
 参照する翻訳は、岩波文庫巖谷國士のもの。注釈だけで100ページ以上あるという充実ぶりだ。
 冒頭部分を書き抜いておく。

 Qui suis-je? Si par exception je m’en rapportais à un adage : en effet pourquoi tout ne reviendrait-il pas à savoir qui je « hante »? Je dois avouer que ce dernier mot m’égare, tendant à établir entre certains êtres et moi des rapports plus singuliers, moins évitables, plus troublants que je ne pensais. (p.9)

 私は誰か? めずらしく諺によるとしたら、これは結局、私が誰と「つきあっている」かを知りさえすればいい、ということになるはずではないか? じつをいうと、この「つきまとっている」ともとれる言葉にはとまどいをおぼえる。それはある人々と私とのあいだに、思いもよらなかったほど奇妙な、避けがたい、気がかりな関係をむすぼうとするからだ。(11頁)


 序文はかなり読みにくかった。翻訳を疑う箇所も一つあったくらい。本文に入ればまともなフランス語になるだろうと期待したのだが、どうだろう。まともの範疇には入るかもしれないが、読み進めるのは容易でないかもしれない。
 嫌になったらいつでもやめることにしよう。