本の覚書

本と語学のはなし

Confessiones


 『告白』の服部訳。

quaeram te, domine, invocans te, et invocem te credens in te : praedicatus enim es nobis. invocat te, domine, fides mea, quam dedisti mihi, quam inspirasti mihi per humanitatem filii tui, per ministrium praedicatoris tui.

主よ、わたしはあなたを呼び求めながら、あなたをたずね、あなたを信じながら、あなたを呼び求めよう。あなたは、われわれに宣べ伝えられておられるからである。主よ、わたしの信仰があなたを呼び求めるのである。わたしの信仰は、あなたがわたしに与えられたものであり、あなたがあなたのみ子の受肉とあなたを宣べ伝える者の奉仕とによって、わたしに注ぎこまれたものである。(6頁)


 第一章を読んでみた限り、かなりやさしいラテン語であることが分かった。しかしながら、アウグスティヌスは若い頃、聖書の文体のあまりの素朴さのためにキリスト教を遠ざけていたというくらいだから、決して単純な文章ではない。繰返しを多用しながら、少しずつ変奏して行く(「invocem」は接続法、「invocat」は直接法であるというようなことにも注意をしておきたい)。その中に、プラトン主義的な思想と情熱とが織り込まれて行く。
 最後の「あなたを宣べ伝える者」とは、アウグスティヌスを回心へみちびくに力あったミラノの司教アンブロシウスのことだという。