●野口悠紀雄『世界経済危機 日本の罪と罰』(ダイヤモンド社,2008年)
今回の経済危機は対岸の火事であって、飛び火に悩まされる日本はいい迷惑だ、というような考えを真っ向から否定する。確かに真の原因はアメリカの過剰消費であるが、それがバブルにまで膨らんだのは、日本、中国、産油国らがアメリカに資本を提供し続けてきたからである。輸出立国モデルから脱却できず、円安へのバイアスがかかる日本では、むしろそういう構図が望ましかったのだ。
著者の提言は明確である。為替レートが60円台となっても収益が上がる産業構造を作ることと、資本面で国際的に開かれた国とすること。
現実には受け入れがたいだろうなということがたくさん書いてあるけど、読んでみた方が良い本。
参考までに。2月2日付け日経新聞のダボス会議閉幕を伝える記事より。
多くのエコノミストは危機発生の構造要因として、米国や英国の大幅な経常赤字と中国や産油国の経常黒字という国際不均衡を指摘した。これについて温家宝・中国首相が米国の「過剰消費」を批判したのに対し、米側は「中国、ドイツ、日本など貯蓄国が世界の需要を奪っている」(カリフォルニア大学バークレー校のローラ・タイソン教授)と反論。責任の所在を巡り意見が対立する場面もあった。
おそらく、どちらも正しいのだろう。
- 作者:野口 悠紀雄
- 発売日: 2008/12/12
- メディア: 単行本