本の覚書

本と語学のはなし

『図解雑学 マクロ経済学』


●井堀利宏『図解雑学 マクロ経済学』(ナツメ社)
 本当はマンキューとか手持ちの伊藤元重で学ぶべきなのだが、今は時間をかけずに全体を見渡しておきたい。
 知らないことはそれほど出てこない。しかし、一つ役立ったことがある。
 先週の「ヴェリタス」の記事に、「市場では、ディルハム*1のドルペッグを維持するために金融政策の自由度が損なわれ、インフレを加速させているとの見方も根強い」という文章があった。ドルペッグと不自由な金融政策の因果関係は分からないものの、ドルに連動していればそりゃ不自由だろうというくらいにしか考えていなかった。
 この本の222ページでは、開放経済における金融政策の効果が説明されている。固定レートの場合、利子率を引き下げて拡張的金融政策を行うと、市場で自国通貨が売られ、ドル買いの圧力が強くなる。すると、中央銀行は固定レート維持のために自国通貨を買い支え、ドル売りを実施する。これでは金融政策の効果はゼロになるというのだ(財政政策の場合は、閉鎖経済ほどではないが、効果あり)。UAEの場合はインフレ懸念ということなので、これとは逆のケースになるのだろうが、いずれにしても、金融政策は不自由に違いない。
 マニアックに学ぶ必要はないけど、金融だけにこだわらず経済学全般も身に付けておきたい。


 ちなみに、いずれドルペッグが外れ通貨価値が高まると期待して、ディルハムに投資している人も多いようだ。UAE中央銀行総裁は、「ヴェリタス」とのインタビューに答えて、ドルペッグ制を「見直す考えはない」と言っているけれど。

図解雑学 マクロ経済学 (図解雑学シリーズ)

図解雑学 マクロ経済学 (図解雑学シリーズ)

*1:UAEの通貨。