本の覚書

本と語学のはなし


永井均中島義道ほか『事典 哲学の木』(講談社


 多分、読んで最も面白い哲学事典である。
 大項目は少ないが、索引を駆使すればかなりの用語はヒットするのではないだろうか。
 一方で、通常の哲学事典では扱わない項目もあり、これは調べものとして使うというより、拾い読みのついでに見つけて、ちょっと得をした気分になる、というものだろう。例えば、中島義道が執筆した「哲学的センス」。「(7)それは、また救われたい衝動を押さえつける強靭なセンスであり、われわれの世界が残酷無比のものであり、救いようのないものであろうとも、それが真実ならそれを引き受けようというセンスである。救済や幸福より真理を優先させようとするセンスであり、ここが宗教的センスとは異なる」(733頁)。