本の覚書

本と語学のはなし

【セネカ】少数の著作家に身を委ねるほうが【心の平静】

Onerat discentem turba, non instruit, multoque satius est paucis te auctoribus tradere, quam errare per multos. (9.4)

汗牛充棟の書は、学ぶ者の重荷になりこそすれ、教えにはならない。多数の著作家のあいだをあてもなく渡り歩くよりは、少数の著作家に身を委ねるほうがはるかにましなのである。(p.421)

 セネカの『心の平静について』は、まだようやく半分を超えたあたりである。できれば来月中に読み終えたい。
 多読や乱読が必要な時期はある。学ぶ範囲を狭めた方がよい時期もある。一般的に言えば、年を重ねるに応じて、限定された対象に集中するのが好ましいように思われる。
 私は少し早く老衰し始めているのかもしれない。


 大西英文の訳は、彼自身の言語感覚が強烈に浮かび上がってくるので、もしこれを読んで酔い心地を感じる人があるとすれば、それは果たしてセネカなのか大西なのかと疑ってみる必要がある。
 大西の訳では、turbaが「汗牛充棟の書」となり、errareが「あてもなく渡り歩く」となるのである。