La douleur insupportable et une pire mort me semblent les plus excusables incitations. (p.362)
わたしには、自死への誘惑のなかでも、苦痛と、悪しき死は、もっとも許せるものだと思われる。(p.69)
モンテーニュ『エセー』第2巻第3章「ケオス島の習慣」を読了する。
上のテキストには「耐えがたい苦痛」とあるが、1595年版に「耐えがたい」という形容詞はないそうで、宮下の訳ではただ「苦痛」となっている。
話題はもっぱら自殺のことである。センシティブなトピックスであるから、モンテーニュは自説を自由に語りはしない。プロスとコンスの具体例を並べてゆくばかりである。
キリスト教ではふつう自殺は罪と考えられている。だが、モンテーニュは許されうる自殺もあるし、それがキリスト教と矛盾することもないはずだと思っていたようである。
プリニウスは、自殺してもかまわない病気に3つあり、その筆頭に膀胱結石を置いていたそうだ。モンテーニュは若い頃から死を恐れた人ではあったが、結石を患ったがために死をほんとうに直視し、その痛みを手懐けつつ死に親しんでいったのであろう。