本の覚書

本と語学のはなし

極楽


 ギリシア神話で、英雄らが死後に住む極楽をエリュシオン(Ἠλύσιον〔Elysion〕)という。
 ルーブルから凱旋門に続く通りはシャン・ゼリゼ(Champs-Élysées)。リエゾンしているので日本語表記の字面からは分かりにくいが、2番目の語はエリゼである。これはエリュシオンに由来する言葉だから、シャン・ゼリゼはエリュシオンの野だったのである。もちろんエリゼ宮も同様。


 車にもエリシオンElysion)という名前のものがある。きっとこれもギリシアのパラダイスから来ているのだろう。
 ところで、これを「エリ」と「シオン」に分けて綴ろうとする人があったとしたら、それは何を意図するものであろうか。
 「エリ」は「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」の「エリ」、すなわち「私の神」のことだろうか(iとyの違いはこの際無視しよう)。だとしたら、「シオン」とは「エルサレム」「神の教会」、あるいは「天国」であろうか。「シオンなる私の神こそ私の楽園」という、「詩編」の一節にでもありそうな意味を込めているのだろうか。