本の覚書

本と語学のはなし

中学数学公式・用語集/旺文社編集

 中学で習う図形は、高校数学の中ではあまり扱われない。合同とか相似とか、久し振りに確認した。
 こんな公式があったのかという発見もある。例えば直方体の対角線の長さを求めるとき、私が中学生の時は、先ず面の対角線を三平方の定理で求め、その後直方体の対角線を三平方の定理で求めるという、2段階の計算をしていた。しかし、言われてみれば当たり前のことであるが、縦・横・高さの3辺を2乗して足し合わせ、その平方根をとれば一発で計算できる。
 正四面体の1辺の長さから、底面積、高さ、体積を求める公式もある。確かにテストでこの問題を出され、公式を用いずに計算しようと思ったら、時間がかかりそうではある。しかし、これは結果を知っているよりも、導出過程を理解していることの方が大事だろうし、その方が応用も利く。

Newton 2022年10月号【周期表】

 化学の最強ガイドマップ 周期表2022
 同じ陽子や電子で出来ているのに、数が異なれば原子の性質はまったく異なる。不思議なものだ。
 しかし、最外殻の電子数が一致するものは、似た性格を持つ。代替材料を開発するときには、同じ族の原子が候補になるそうだ。
 例えば、リチウムは希少であるため、リチウム電池の代わりになるものを作ろうとすれば、同じ1族のナトリウムやカリウムを用いるのがよい。研究も進められているらしい。


 最新宇宙望遠鏡の初画像
 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の美しい画像をいくつか。
 ネットでハッブル宇宙望遠鏡の画像と比較したものを見たことがあるが、デビュー早々ポテンシャルの高さを示していた。


 人口80億人時代のファクトブック
 2060年頃に世界の人口は100億人を超えるが、2100年頃を境に段々と減少し始めるようだ。
 現在は中国とインドがほぼ同じ14億人であるが、2100年頃にはインドの15億人に対して中国は8億人弱。アフリカの存在感が増す。一方既にピークアウトしている日本は、7000万人くらいまで減少し、現在の世界11位の座から33位にまで落ち込むと予想されている。
 アフリカ問題、タンパク質危機、AIとの共存。課題が待ち受けている。


 探査機がとらえた太陽系図
 探査機が写した美しい惑星の画像。天王星海王星は大気中に含まれるメタンのために、どちらも青く見える。私は特に天王星の青白い色が好きだ。
 この2つの惑星の色の違いは何によるのか。科学ニュースを扱ったFOCUSというページに、これを統一的に説明できるモデルが提唱されたと書かれている。分かりにくい文章ではっきりとまとめることは出来ないが、要は天王星の方は大気上方のメタンの雲が厚くて、その雲は青色以外の光も反射するので、少し白っぽくなるということらしい。


 認知症の最新知識
 40~50代の半数に、アルツハイマー病の兆しがあるという。これは脳内の嗅内野に神経原線維変化をきたした状態で、まだアルツハイマー病と診断されるわけではないが、これが進行すると、海馬や新皮質全体へと広がっていく。
 メカニズムはまだ解明されていないが、アミロイドβとタウが関連しているだろうと考えられている。


 世界の潜水艦
 先月は戦闘機、今月は潜水艦。Newtonは軍事技術にも興味津々のようだ。


 世界を襲う未曾有の干ばつ
 温暖化の影響もあって、近年干ばつが増えている。今後今以上に対策を取らなければ、近い将来、南アメリカ南西部、地中海ヨーロッパ、北アフリカでは、深刻な干ばつが常態化すると予想されている。


 世界の恐竜博物館
 パラサウロロフスのトサカの内部は、先端で折り返す管状の空洞になっており、この空洞を通じて鼻へ空気を強く送り出すと、音が出ることが分かっている。この音はコミュニケーションに使われていたのではないかと考えられている。

シェイクスピア全集1 喜劇Ⅰ/シェイクスピア

 『間違いの喜劇』(小田島雄志訳)、『じゃじゃ馬ならし』(三神勲訳)、『ヴェロナの二紳士』(北川悌二訳)、『恋の骨折損』(和田勇一訳)、『夏の夜の夢』(平井正穂訳)、『ヴェニスの商人』(菅泰夫訳)の6作品を収録する。初期の喜劇である。


 白水社小田島雄志の個人訳には注釈が一切なかった。そういうものを必要とせず、日本語として自立して、そのまま舞台で使えるような訳を目指していたのだろう。
 一方、この筑摩書房の全集には注釈がある。ギリシア神話や聖書の物語が簡単に説明されるほか、喜劇作品に特徴的な洒落の解説もしてくれる。便利である。しかし、「うまく日本語に訳せぬ」とか「とても訳出できない」といった諦念の逃げ道となっている風もあって、翻訳をそのまま舞台の人物に喋らせてみたところで、とても日本語には聞こえないだろうという訳が多く見られる。
 一長一短である。小田島訳を読んでいれば、原文ではどうなっているのだろうと常に気になるし、筑摩書房版を読んでいれば、苦し紛れの訳に苦しむことになる。


 シェイクスピアの全戯曲を入手する一番安い方法は、坪内逍遙の翻訳を1冊にまとめた本を買うことだと思うが、次はおそらく筑摩書房版を古本屋で探すことである。小田島雄志訳や松岡和子訳を集めるのが大変だという人には、ありがたい選択肢であるはずだ。
 やや日本語が古いと感じることもあるが、坪内逍遙に比べれば十分に読みうる現代語である。詩作品も収められていて、お得である。
 なお、新潮社の福田恆存訳は、全集と書かれているが、全戯曲が収められているわけではないので、気をつけられたい。大体のところは新潮文庫に入っているから、熱烈な福田ファンでない限り、あえて全集に手を出す必要はないだろう。


 シェイクスピアほど多くの翻訳を持つ人も珍しい。それほどにシェイクスピアを読むということは特別な体験であるのだ。