本の覚書

本と語学のはなし

【モンテーニュ】フランス貴族の本質的なかたちは軍職【エセー2.7】

La forme propre, et seule, et essencielle, de noblesse en France, c'est la vacation militaire. (p.384)

フランス貴族の、本来の、唯一の、本質的なかたちは、軍職ということである。(p.113)

 モンテーニュ『エセー』第2巻第7章「名誉の報酬について」を読了する。
 モンテーニュも授与されたサン・ミシェル勲章は、乱発によって全く価値を失ってしまった。一見それを嘆いているだけの小編であるが、そうとばかりも言えないようだ。
 彼はよく自らを軍人という。軍人であるということに誇りを抱いている風でもある。戦場にいたことはあるにしても、実際に戦闘を行ったことがあるのかは知らない。経験の有無はともかく、田舎貴族の長男として、本来的には軍人であるということだろうか。
 軍人の徳の第一は、勇気に他ならない。だが、軍人モンテーニュは、勇気を声の限りに賞賛するわけではない。勇敢な人間が弱い人間を支配し、地位と名声を獲得した。もっとも馴染みのある徳に、彼らは名誉ある称号を付与したのである。
 さらに言う。我々の情念も同じである。女性の貞潔に不安を抱くのあまり、名誉と徳の女性と言うことで、実際には貞潔な女性を表しているのだ、と。