去年から同じ作品ばかり何度も読んでいる。だが、この先は未知の領域だ。第2巻には倫理論集の残り、第3巻と第4巻には自然論集と断片等の補遺(『セネカとパウロの往復書簡集』という明らかな偽書も含まれている)、第5巻と第6巻には倫理書簡集、京大の西洋古典叢書には悲劇集。
特に楽しみにしているのは、モンテーニュが好んだ書簡集である。私はモンテーニュの引用や中野孝次の抄訳(重訳)でしか触れたことがないが、セネカの文体は短い手紙のほうが似合うだろうという想像はつく。それに、私のような年寄りには、ともかく短ければ何でもありがたいのだ。
セネカを読む際は、理想と現実の落差に注意する必要がある。イデアとしての非人間的な賢者の言説だけを、純粋なストア的理想として追求するのは、おそらくセネカの意図ではない。
また、セネカの哲学の背景には、壮大な宇宙論が存在することも忘れてはならないだろう。