本の覚書

本と語学のはなし

リチャード二世/ウィリアム・シェイクスピア

 リチャード二世はエドワード黒太子の子。王としては暴政を敷き、貴族からも民衆からも見放される。
 イギリスから追放された従兄弟のボリングブルックは、父ランカスター公の死後、不当に領地を没収されたことに異議を唱え、反乱を起こして王位を簒奪する。これがランカスター朝のヘンリー四世である。
 もう一人の従兄弟である、ヨーク公の息子オーマールは、リチャード二世の側につき、ヘンリー四世即位後にも謀反を企てる。
 エドワード三世の子どもたちの代には一つであったものが、孫たちの代にいたって散り散りになった。ここに既にバラ戦争の萌芽が兆しているようだ。


 リチャード二世は幽閉後、ヘンリー四世の意志を忖度した騎士によって暗殺される。
 だが、彼は腹黒い悪漢としてのみ描かれているわけではない。全編韻文で書かれているこの劇にあって、最も優れた詩人は王位を廃された後のリチャード二世である。