本の覚書

本と語学のはなし

ジェイン・オースティンの手紙/新井潤美編訳

 現存するジェイン・オースティンの手紙の中から、半数ほどを選んで翻訳したもの。そのほとんどが姉のキャサンドラ(カサンドラと表記される方が普通である)に宛てたものであるが、その姉によって破棄された手紙も多くあったらしい。
 ジェインは初期作品に明瞭に見て取れるとおり、機知とユーモアの人であった。時にはそれがかなり意地の悪い人間観察になったこともあるのだろう。
 ところで、ジェインもキャサンドラも共に生涯独身で、転居する際も一緒であり、生涯一緒に暮らし続けた。しかし、遊びや看病やその他の用事などで親戚や友人の家に行くことが多く、一度遠出をすれば数週間は滞在するのが常であったから、姉妹の所在地が常に一致していたわけではない。それで多くの手紙が書かれたのである。
 逆に、所在地が一致するときには書かれない。ジェインの死が近づくにつれて、キャサンドラ宛の手紙は姿を見せなくなる。キャサンドラがつきっきりで看病していたからである。
 この書簡集に収められた最後の二通の手紙に再びキャサンドラが登場する。しかし、手紙の宛先人としてではない。ジェインが愛した姪のファニーにジェインの死を報告する書き手としてである。


 人名索引がないのは残念なことだ。注で誰のことか書いてあることもあるが、何も書かれていないことも多い。ファーストネームが同じ人物は多数いるし、名字まで与えられていてもそれが誰なのか思い出せないことも多々ある。


 英文学はシャーロック・ホームズジェイン・オースティンを終え、これから最後のウィリアム・シェイクスピア特集に入る。
 37の戯曲(シェイクスピアが何らかの形で関わったものは、約40とも言われる)とソネット集、その他の詩集を集中的に読む。