本の覚書

本と語学のはなし

新約聖書と文学批評/ウィリアム・A・ビアズリー

 文学批評〔=資料批判〕的方法は、伝統的に、種々の新約諸文書の著者の推定、既存の著作が複合的性格を持つ可能性の推定、特定の文書の背後にある資料の確認とその規模の推定などにかかわってきた。しかし、最近では、聖書学者たちは、小説や詩の批評および言語の美学や哲学に注意を向けつつある。したがって、新約聖書の文学批評は、内容と形式の関係、構造や形式の意義、思想に指示を与えながら実存そのものを形作る言語の力というような問題に対する関心を反映し始めた。このシリーズのうちでも、文学批評に関するものは、この方法の旧い面と新しい面の両方をふまえることになるであろう。(p.6)