- 作者:山我 哲雄
- 発売日: 2014/12/20
- メディア: 新書
▼内容的にもバランスがよい。背景としてのユダヤ教、史的イエス、キリスト教成立から現代に至る歴史、カトリック・東方正教会・プロテスタントの紹介など、教義の他にもぜひ知っておきたいキリスト教の基本が大体押さえられている。
▼史的イエスが入門書で触れられることはあまりないように思う。聖書学者としてとても良心的な仕事をしている(著者の専門は旧約であるけど)。個々の文書の成立についても簡単に触れられている。もう一歩踏み込んで、正典成立の過程を扱ってくれるとなお良かった。
▼東方正教会について、入門書にしては詳しく扱っている。複雑に枝分かれして分かりにくいプロテスタントも、大まかな流れが理解できるようになっている。とても有難い。
▼キリスト教系新宗教(他のキリスト教教派からはキリスト教とは認められていない)について簡単に触れられている。あからさまに邪教だと非難しているのではないけど、霊感商法とかサークル活動を名目にした勧誘活動などにも触れられていて、これから大学に入って独り暮らしを始めるだろう高校生に対する教育的配慮が感じられる。
▼こんな入門書を最初に読んでおきたかった。
▼原理主義、あるいは福音主義からは距離を置いた書き方をしているので、新共同訳を使わない教会の人にはお勧めできないかもしれない。勧めたところで、史的イエスに一章を割いている時点で手に取ろうとはしないだろうけど。