本の覚書

本と語学のはなし

ダ・ヴィンチ・コード最終解読/皆神龍太郎[と学会]

 ダン・ブラウンの『ダ・ヴィンチ・コード』が事実として描いていることが、実は全く事実ではないことを教えてくれる本。伝説というものがどういうふうに形成されていくのか、なかなか興味深い。
 以下に簡単な経過をまとめてみた。

 レンヌ=ル=シャトーでソニエール神父が突如大金持ちになったのは、闇ミサを大量に行っていたかららしいが、本人は何も洩らさなかったから当時はいろんな噂が立った。
 それをメロヴィング朝の末裔を騙るシオン修道会プランタールが利用し、友人の協力を得てソニエール神父が発見したという羊皮紙の暗号文を捏造。ダ・ヴィンチらが歴代総長に名を連ねるシオン修道会の『秘密文書』も偽造し、フランス国立図書館に寄贈する。
 プランタールに資料を貰い、ジェラール・ド・セールはレンヌ=ル=シャトーに関する本を書き上げる。
 これに目をとめたイギリス人のヘンリー・リンカーンが、BBCの企画としてレンヌ=ル=シャトーを取り上げる。またその取材をもとに、『レンヌ=ル=シャトーの謎』という本を書き上げ、イエスの血脈がマグダラのマリアによって伝えられ、メロヴィング朝を通じ現在に至るまでシオン修道会によって守られていると、プランタールも考えていなかったような結論を導き出す。
 『レンヌ=ル=シャトーの謎』にインスパイアーされて書かれた『マグダラとヨハネのミステリー』では、ダ・ヴィンチの暗号が伝説に加えられる。
 類書が生み出されていく中、これらを利用して(恐らくはシオン修道会の中世からの存続を信じて)、ダン・ブラウンが『ダ・ヴィンチ・コード』を書き、世界的なベスト・セラーになり、映画化もされる。