本の覚書

本と語学のはなし

ダ・ヴィンチ・コード(上)/ダン・ブラウン

ダ・ヴィンチ・コード(上) (角川文庫)

ダ・ヴィンチ・コード(上) (角川文庫)

 以前にも読んだことがあるけど、話の筋はすっかり忘れていた。しかし、聖杯がどのように解釈されているかはよく覚えている。

 ルーブル美術館の館長ジャック・ソニエールが、オプス・デイの修道僧シラスに暗殺された。ソニエールは死の間際、孫娘でフランス司法警察暗号解読官のソフィー・ヌヴー、そしてハーヴァード大学で宗教象徴学を教える主人公ロバート・ラングドンに、シオン修道会の秘密を暗号によって託した。
 シオン修道会は十字軍においてテンプル騎士団を組織し、彼らの伝える秘密が確かであることを裏付ける文書を、エルサレムの神殿の至聖所に見つけ、一夜にして絶大な力を手に入れたとも言われる。やがて強大になりすぎた騎士団は、教皇とフランス国王のために壊滅させられることになるが、その秘密はなおもシオン修道会によって守り続けられているという。

 「サングリアル(Sangreal)? フランス語の“サン(sang)”とかスペイン語の“サングレ(sangre)”と関係があるのかしら。両方とも“血”という意味だけど」
 ラングドンはうなずいた。血はサングリアルと深い結びつきがあるが、ソフィーの想像している関係とはおそらくちがう。
(中略)
 「サングリアルというのは昔のことばだ。長いあいだに変化して、いまは別の言い方になっている……もっと現代的な呼び名にね」そこで間をとった。「いまの呼び名を聞けば、きみもよく知っているものだと納得するさ。サングリアルにまつわる話は、たぶんだれもが聞いたことがあるはずだ」
 ソフィーは信じていない様子だった。「わたしは一度もないわ」
 「いやあるさ」ラングドンは微笑んだ。「“聖杯”という呼び名の方が耳馴れているだけだ」

 聖杯。英語ではHoly Grailだが、フランス語ではSaint-Graal。つまりサングラールである。最後の晩餐でイエスが用い、また十字架上のイエスの傷から流れる血を受け止めたと言われる。しかし、“血”をめぐってはまた別の解釈も存在する。後の巻でそれが明らかにされていくだろう。