本の覚書

本と語学のはなし

修道院にみるヨーロッパの心/朝倉文市

 最初の修道士・聖アントニオス、修道院を始めて組織したパコミオス、西欧修道院の父・聖ベネディクトゥス、大規模な発展を見せたクリュニー修道院、その後の危機から生じたシトー修道院、さらには使徒的使命を帯びて発足したドミニコ会フランシスコ会、十字軍において救護者としてあるいは戦士として活動した騎士修道会。薄い本の中で、ひと通りの中世修道院の歴史を振り返ることができる。

しかしフランシスコの理想は、使徒たちに倣うこと、というよりもむしろ神でありそして人となったキリストご自身の精神を観想し、キリストの生き方そのものを自らも生きようという「キリスト自身に倣う」ことにあったと解したい。なぜなら、彼らの生き方が、言行一致の姿勢を守り、清貧と兄弟のような集団生活を営み、贖罪の説教をすることによって福音を重んじる「小さな兄弟会」であったことからもわかる。まもなくしてフランシスコとともに生活し、その教えを受けたいという仲間たちが加わるようになった。(p.69)

 しかし、フランシスコ(フランチェスコ)の生きている内から、会は彼の意に沿わぬ方向へと動き始める。彼は最初からの仲間とともに会の活動から身を引き、アヴェルナ山中にこもることになった。
 修道院の歴史は常に当初の理想からの逸脱に終わるのかもしれない。

 なお著者の日本語はかなりおかしいので(私も人のことは言えないのだけど)、少し寛容な気持ちをもって読まなくてはならない。