本の覚書

本と語学のはなし

世に棲む日日(一)/司馬遼太郎

新装版 世に棲む日日 (1) (文春文庫)

新装版 世に棲む日日 (1) (文春文庫)

 久し振りに職場で歴史小説を読んでみた。同僚に絡まれさえしなかったら、これほど職場向きの読書はない。スピノザでカモフラージュしつつ(歴史のみならず漢詩にも異常な反応を見せた同僚も、哲学に対してはいまだ片言隻語の感想も洩らそうとはしない)、こっそり復活させよう。

 高杉晋作の話だと思っていたら、一巻は吉田松陰の青春時代にすべて宛てられていた。松下村塾で弟子の指導に専心する師としての姿はまだなく、ペリーが来たと聞けば浦賀に飛んで行ってその目で黒船を観察し、プチャーチンが来たと聞けばロシアに密航すべく長崎に潜入するといった具合で、落ち着きがない。
 二巻に入ると、いよいよペリーの二度目の来航に合わせて、アメリカ行きを企てることになろう。失敗する可能性の方が高いと思っていただろうから、刑死への企てであったかもしれない。
 しかし、その前に『アッシジのフランチェスコ』を読む。キリスト教についてもいろいろ学びたいので、職場で読めるものは職場に携帯するつもりだ。哲学に対してと同様、宗教にも恐らく容喙するすべを知らないだろうと踏んでいる。