本の覚書

本と語学のはなし

詩人の力

 Wenn die Natur des Fadens ewge Länge,
 Gleichgültig drehend, auf die Spindel zwingt,
 Wenn aller Wesen unharmonsche Menge
 Verdrießlich durcheinander klingt:
 ......
 Wer schüttet alle schönen Frühlingsblüten
 Auf der Geliebten Pfade hin?
 Wer flicht die unbedeutend grünen Blätter
 Zum Ehrenkranz Verdiensten jeder Art?
 Wer sichert den Olymp? vereinet die Götter?
 Des Menschen Kraft, im Dichter offenbart. (p.15) 

 自然は無際限なる長さの糸に、
 意味もなく縒(より)を掛けて紡錘(つむ)に巻くに過ぎない。
 万物の雑然たる群は
 不精々々に互に響を合わせているに過ぎない。
 ……
 誰が恋中の二人が歩む道のゆく手に
 美しい春の花を蒔くのです。
 誰が種々の功(いさお)を立てた人のために
 見栄えのしない青葉を誉の輪飾〔月桂冠のこと〕に編むのです。
 誰がオリンポスの山を崩さずに置いて、神々を集わせるのです。
 人間の力が、詩人によって啓示せられるのではありませんか。(p.20-21)

 詩人に生殺与奪の権能が与えられているのだとすれば、これらの反対のこともまた詩人は能くなし得るであろう。

 引用は『ファウスト』からだが、本編はまだ始まっていない。
 このところ欲張って、今学んでいる全ての言語に触れることを、日課としている。時間の管理が肝要である。