本の覚書

本と語学のはなし

小説講座 売れる作家の全技術/大沢在昌


 選抜された作家志望者を相手に、大沢在昌が講義し、質疑に応答し、課題を与えて講評する。テクニックだけならクーンツの『ベストセラー小説の書き方』の方が包括的だが(未読だけど)、生徒の作品に対するあれこれのアドバイスが、あるべき小説の方向を教えてくれて面白い。この手の本の中では親切な部類に入る。
 エンターテインメントを書くことに興味がないとしても、良質なエンターテインメントの産婆術に通じているに越したことはない。テクニックは使い、裏切らなくてはいけない。テクニックの梯子の届かぬところまで、昇り、降って行かなくてはならない。その消息はもう言語化しうるテクニックではないけれど、それを会得するには先ずテクニックに沿って考え抜いてみる必要があるのではないか。テクニックに絡め取られて七転八倒してみて、初めてテクニックを無化することができるのではないか。