●野村喜和夫『現代詩作マニュアル 詩の森に踏み込むために』(思潮社)
やや中途半端な入門書という感じもするが、戦後の日本の詩を概観し、詩のたたずまいについて多少の予感を与え、ミニ・アンソロジーと言えるくらいには引用も豊富である。最初の1冊としてはいいかもしれない。
もう2冊、入門的なアンソロジーを買うつもりだ。歳のせいか、小難しい理論を欲しなくなってきている。詩を読むことを通じてのみ、今の私は詩作へと通じる可能性を見出すだろう。先ずは読むこと。茨木のり子(岩波ジュニア新書)や大岡信(新書館)らを手引きとして、詩人の呼吸とある種の断層を発見すること。
昨日書いた「あるアンソロジー」*1とは、この本のことだった(どうもボケ始めてきたらしい)。詩の作者は田村隆一。詩集『四千の日と夜』のタイトルポエムである。冒頭を書き抜く。
一編の詩が生まれるためには、
われわれは殺さなければならない
多くものを殺さなければならない
多くの愛するものを射殺し、暗殺し、毒殺するのだ
やや時代がかっているけど、まことにその通りだろう。そして戦後の詩は、この荒涼とした大地から立ち上がったのである。赤黒く染まった大地の記憶の中に根を張って。
現代詩作マニュアル―詩の森に踏み込むために (詩の森文庫 (105))
- 作者:野村 喜和夫
- メディア: 新書