本の覚書

本と語学のはなし

『Decline and Fall』


●Evelyn Waugh『Decline and Fall』(Penguin Books)
 ポール・ペニーフェザーの奇妙な運命を描いたユーモア小説。波乱に満ちた事件の数々、しかし主人公は大した感情の変化もなく、淡々と受け入れて行く。醜くうごめいているのは彼の周りである。しかし、ともかくも彼はそれを是認する。最後には運命は再び元の位置に戻り、主人公は何の不足もなく聖職者への道を歩むのである。
 このように終わることがウォーの限界であると言えば言えるであろうが、全てをユーモアに包んで受容する精神態度には抗いがたい魅力がある。


 英語の原文はすらすら読むという訳にはいかなかったが、難解極まるものではない。
 知らない単語や熟語はまだ多く存在するし、知っているつもりの単語にも知らない語義はまだまだある。いつもの通りそれは思い知らされる。しかし、英語のかたちはかなり見えて来ているように思う。


 参照した翻訳は、イーヴリン・ウォー『大転落』(富山太佳夫訳,岩波文庫)。底本はペンギン版と多少の異同がある。

Modern Classics Decline and Fall Centennial Edition (Penguin Modern Classics)

Modern Classics Decline and Fall Centennial Edition (Penguin Modern Classics)

  • 作者:Waugh, Evelyn
  • 発売日: 2003/08/26
  • メディア: マスマーケット
大転落 (岩波文庫)

大転落 (岩波文庫)