本の覚書

本と語学のはなし

『なぜ世界は不況に陥ったのか』


●池尾和人・池田信夫『なぜ世界は不況に陥ったのか 集中講義・金融危機と経済学』(日経BP社)
 強欲な投資銀行やグローバル金融資本主義の時代は終焉する、というような主張をするのではなく、市場が機能するようなルール設計をしましょうという本。

池尾市場メカニズムは不出来なものかもしれないけど、その不出来なものを何とか、少しでもいい形で使っていく以外に道はないのだという、冷めた認識が日本社会にはまだ乏しいと思われます。私は市場メカニズムというのは、決して一〇〇点満点のものだとか、八〇点取れる優等生だとは思っていなくて、欠陥の多い仕組みだと思っています。劣等生に近いかもしれない。まあ、ぎりぎり及第点が取れるぐらいのシステムというところです。
 だから、市場メカニズムを悪く言おう、非難しようと思えば、材料はいっぱいあります。でも非難したからといって、じゃあ、代わりのものがあるのかという話です。代わりのものはないというところの認識があるかどうかが決定的です。(222頁)


 確かにその認識が分かれ目である。
 日本の現状については、アメリカ発の金融危機とは本質的に切り離して考える必要がある。

池尾◆日本の経常黒字を何か重商主義的発想でいいことだと思っている人もいますけれども、それが意味しているのは、貯蓄を自分の国で使いきれない、投資機会の乏しい、ビジネスをやるのには適していない国がいまの日本だということなのです。それをビジネスをやるのに適した国に変えていくか、それとももう貯蓄ができないぐらい貧しくなるかのいずれかをいま迫られているわけです。この構造調整は相当大きい問題です。(229頁)


 池尾はあるインタビューで、日本の今後10年を占い、「質素で退屈で憂鬱な低成長の時代」になるんじゃないかと口走ってしまったそうだ。

なぜ世界は不況に陥ったのか

なぜ世界は不況に陥ったのか