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実現不能の理想論【英語】

The Summing Up (Vintage Classics)

The Summing Up (Vintage Classics)

サミング・アップ (岩波文庫)

サミング・アップ (岩波文庫)

  • 作者:モーム
  • 発売日: 2007/02/16
  • メディア: 文庫

He has already had his reward in the satisfaction of his creative instinct. Now this is no counsel of perfection; it is the only condition on which the artist can work his way towards the unattainable perfection that is his aim. (p.183)

既に創造本能を満足させて報いられたのだから、それでよしとすべきだ。それでよしとするというのは、実現不能の理想論ではなく、芸術家が目標とする手の届かぬ完璧さに向かって精進する際の唯一の条件なのだ。(p.220)

 作家にとって重要なのは読者の評価ではないという話の流れで。
 分かりにくいのは「no counsel of perfection」というフレーズで、「実現不能の理想論ではなく」などと訳されても、益々ピンとこない。
 辞書で調べると、元は神学用語で「完徳の勧め」のことらしい。『英和活用大辞典』(昔は紙のものも持っていたが、今は電子辞書版のみである)には、マタイ19章21節を参照せよとある。
 新共同訳で引用してみる。

エスは言われた。「もし完全になりたいのなら、行って持ち物を売り払い、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に富を積むことになる。それから、わたしに従いなさい。」

 そう言われた金持ちの青年は悲しそうに去って行った。「金持ちが神の国に入るよりも、らくだが針の穴を通る方がまだ易しい」と言われた、あの有名な青年である。
 らくだが針の穴を通る方がまだ易しいのであれば、そんなことは不可能であるに違いない。「完徳の勧め」は「実行できそうもない助言」や「窮余の策」などをも表すようになった。
 モームの場合は、作家が読者の評価に失望せず、おのれの創作本能に忠実であり続けることが、実現不能の理想論ではなく、また別の形での完成を成し遂げるための条件でさえあるのだと言っているようである。


【家庭菜園】
 鹿児島から届いたサツマイモの苗は、届いたまま植え付けた。ガッテン農法には、水はバケツから貰えるものだなどと勘違いさせてはならないと、なかなかにスパルタなことが書いてあるから、それに従ってみたのである。
 しかし、残りの苗は予備としてバケツの水に浸けておいた。
 1週間ほどして活着を確認した。余った苗を捨てるのは忍びなかったので、クリムソンクローバとライムギを刈り、短い高畝を2つ立てて、植えてみた。作物が育たないと言われてる領域ではあるが、ダメ元である。
 こちらは直ぐに活着した。今後の生育状況も比較してみなくては何とも言えないが、根を出させてから植え付ける方が、やはり安全ではないのだろうか。
 植え付け後間もなく、不自然に葉が折りたたまれているので開いてみたら、もう何ものかの卵が産み付けられていた。


 畝を1つ高めに立て直して、ツルムラサキとインゲンの種をまいた。
 苗カバーで初期生育を守る。


 ズボラ菜園で紹介されていたペットボトルキャップを幾つか作る。500mlの丸い透明なペットボトルの底を切り取るだけである。
 種をまいた上に、1か月くらい被せる。南さんはこれを使って、大抵のものを直まきするらしい。
 私は葉菜類をこれで育てられないかと思ったのである。トンネルは作業が面倒だし、防御も完璧ではない(私のやり方が甘いのだろうけど)。早速アブラナ科を3種類播種してみた。
 すじまきは出来ないが、間引くのは手間なので構わない。しかし、直径6cm程度の円柱では、収穫まで被せ続けるのは無理があるかもしれない。どんな風に育つのか確認したい。


 今年の収穫も大事ではあるが、どちらかと言うと、来年の計画のためにいろいろ試している。