本の覚書

本と語学のはなし

宝慶記・正法眼蔵随聞記 原文対照現代語訳・道元禅師全集⑯/伊藤秀憲・東隆眞訳註

 三月に『宝慶記』を読み、『正法眼蔵随聞記』の途中でやめた。その続きから始めて、なんとか読了にこぎつける。
 『正法眼蔵随聞記』は、若き日の道元の言葉を弟子の懐奘が書き留めたもので、最良の道元入門である。私も最初に道元に触れたのは岩波文庫の『随聞記』によってだった。岩波文庫のは、江戸時代に読みやすいように校訂して流布本となった面山本を底本としている。とっかかりとしてお薦めなのだが、語釈も現代語訳もないから、必要ならば角川文庫のものを古本で入手するとよい。道元に関心はなくても、日本の古典としてこれを読まないのはちょっと勿体ない。

学道の用心と云(いう)は、我心(わがこころ)にたがへども、師の言(こと)ば、聖教のことならば、暫く其に随て、本(もと)の我見(がけん)をすてて、改めゆく、この心、学道の故道也。(六)

無所得無所悟にて、端坐して、時を移さば、即(すなわち)、祖道なるべし。(六)