本の覚書

本と語学のはなし

はじめての宗教論(左巻)/佐藤優

 シュライエルマッハーとカール・バルトを軸にキリスト教神学のあらましを解説してくれる。プロテスタントの思考の雰囲気が伝わってきて右巻よりはずっと面白いのだが、若者相手に講義をしているような調子で書かれているので、雑談がとても多く、その分踏み込みが足りないように思えてしまう。
 これから神学関係の本を少し立ち入って読んでみたいと思うのだけど、分厚いし、高価だし、絶版のものも多くて困る。

 神を信じるというだけではキリスト教にはならない。唯一神を信じるでも足りない。歴史上ただ一回だけ、超越せる神から人間の側に一つの啓示が受肉した。このイエスを神のひとり子と信じ、救い主キリストであると告白するのでなくては、キリスト教にはならないのである。キリスト教徒であるとは、このイエスという固有名詞にとことん拘ることでなくてはならない。
 このような立ち位置から見えるものを理解しなくては、欧米の思想も文化もその表層しか掴めないだろう。

【参考】
はじめての宗教論(右巻)/佐藤優