- 発売日: 1984/09/17
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昔なら陶潜か李白かばかりに目が行って、杜甫を顧みることはほとんどなかっただろうけど、今は一番好きかもしれない。
水檻遣心(水檻に心を遣る)
去 郭 軒 楹 敞 郭を去って軒楹敞く、
無 村 眺 望 賖 村無くして眺望賖かなり。
澄 江 平 少 岸 澄江 平らかにして岸少なく、
幽 樹 晩 多 花 幽樹 晩くして花多し。
細 雨 魚 児 出 細雨 魚児出で、
微 風 燕 子 斜 微風 燕子斜めなり。
城 中 十 万 戸 城中 十万戸、
此 地 両 三 家 此の地 両三家。
それにしても、中国史通をもって自ら任じている同僚が、漢詩に関しても甚だしく干渉をしてくるので辟易している。といっても、それはほとんど口実に過ぎない。漢詩は分からんと結論した後、中国史の通俗的な知識を開陳しようというだけなのである。歴史小説をやめたようには漢詩をやめるつもりはないのだが、彼と組む時だけは何か対策を講じなくてはならない。