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本の覚書

本と語学のはなし

TIME March 27, 2017

Time Asia [US] March 27 2017 (単号)

Time Asia [US] March 27 2017 (単号)

 私が英字新聞を読もうと思ってサンプルを取り寄せた頃、Brexit という造語を目にして、英語の現在にキャッチアップしていくのも大変なのだなと思ったものだ。ところが今度は、Frexit まで出てきたのである。

Like Trump’s victory, a win by Le Pen would have a seismic impact far beyond the country’s borders. A Frexit and ditching the euro would be a grievous blow to an E.U. reeling from Brexit, severely weakening it. Deutsche Bank warned in late February that the impact of a President Le Pen’s Frexit push could be “beyond a ‘Lehman’s moment,’” referring to the collapse of Lehman Brothers investment bank in 2008, which heralded the deepest global recession since 1930s. (p.26-27)

 もちろん全てはまだ仮定形である。
 しかし、ドイツ銀行の言うところでは、もしル・ペンが大統領になり Frexit が現実のものとなれば、リーマン・ブラザーズの時以上のインパクトがあるかもしれないようだ。

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アンスタブル【英語】

The Summing Up (Vintage Classics)

The Summing Up (Vintage Classics)

サミング・アップ (岩波文庫)

サミング・アップ (岩波文庫)

 行方昭夫の訳は、ここまでやってもいいのだろうかと思うことが少なからずあるのだけど、作者の意図を汲み取る上では(本当に難しい文章では、その可能性のひとつに過ぎないこともあるが)、参考になる。


 紹介するのは、原文自体は別に難しくないが、訳者の癖が出そうなところ。先ずは行方訳から。

英語の発音に関しては長いあいだ自信が持てずにいた。イギリスに移って、パブリックスクール入学前の小学校にいた頃、「水のようにアンステイブル(不安定)」という句を発音するとき、「アンスタブル」とフランス語風に発音したものだから、みんなが爆笑して恥ずかしかったことは今でも忘れられない。(p.28)

 こう書いてあれば、原文のどこかに French という単語があるのだろうと想像するだろうか。モームはそういう野暮な表現はしない。

I was so long uncertain about the pronounciation of English words, and I have never forgotten the roar of laughter that abashed me when in my preparatory school I read out the phrase ‘unstable as water’ as though unstable rhymed with Dunstable. (p.19)

 モームは幼少の頃パリで暮らしていた。英語の発音には自信がない。イギリスに戻り、preparatory school (説明的に「パブリックスクール入学前の小学校」と訳されている)でアンステイブルをアンスタブルと読んでどっと笑われた。だがそれは、フランス風に読んだのではなく、as though unstable rhymed with Dunstable と言われている。ダンスタブル(人名もしくは地名)と同韻語であるかのように、アンステイブルをアンスタブルと発音してしまったというのである。
 直訳しても、フランス語を知らない人にはそれがフランス風の発音であることは分からない。そこを親切に分からせてあげるか、作者と一緒につんとすますか、注釈をつけるか。選択肢はいろいろとある。
 行方は割と噛み砕くタイプの訳者である。原文の風味は消えるかもしれない。原文と一緒に読むには、これ以上ないパートナーである。

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ウェストミンスター小教理問答/ウェストミンスター神学者会議

ウェストミンスター小教理問答

ウェストミンスター小教理問答

 「ウェストミンスター小教理問答」は17世紀中葉、ロンドンのウェストミンスター寺院で開かれたウェストミンスター神学者会議が作成したもので、同時に作られた「大教理問答」の縮約版となっている。*1

問1 人間の主要な目的は何ですか。
答  人間の主要な目的は、神の栄光をたたえ、永遠に神を喜ぶことです。(p.9)

問23 キリストは、私たちの贖い主として、どのような職務を遂行されますか。
答  キリストは、私たちの贖い主として、謙卑と高挙のいずれの状態においても、預言者と祭司と王の職務を遂行されます。(p.16)


 少し驚いたのは、十戒の内の第八戒「盗んではならない」の積極的方面についての教え。

問74 第八戒では、何が求められていますか。
答  第八戒は、わたしたち自身と他の人々の富と財産を、合法的に獲得し、殖やすことを求めています。(p.34)

 「盗んではならない」というのは文字通り他人の所有を侵してはならないとうことを意味しているに過ぎないように思われるのだが、神が盗みを禁じているということは合法的に利殖することを求めているからだと考えるタイプの人たちが存在するのである。
 私は『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を読んだことはないけれど、確かにここを見るだけでもウェーバーの言うことが正しいように思えてくる。

*1:新教出版社の『ウェストミンスター信仰基準』を買うと、「信仰告白」「大教理問答」「小教理問答」が一冊に収められていてお得であることに、後から気が付いた。

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