本の覚書

本と語学のはなし

Newton別冊 超ひも理論と宇宙のすべてを支配する数式/木村直之編集

 3部に分かれていて、第1部は超ひも理論の基本を解説。
 標準理論では素粒子を体積のない1次元の点と考えるのに対して、超ひも理論では2次元のひも(弦)として考える。たった1種類のひもが9次元の中で振動しながら様々な素粒子になると想定することで、量子論相対性理論を統一することも可能になると期待されている。


 第2部は宇宙のすべてを支配する数式。
 数式と言っても、ほとんどアルファベットやギリシア文字で表現されている。数学的な言語と考えた方がよさそうだ。
 簡単に説明はされるが、数学的というよりは物理的なものであり、理解するというよりは鑑賞するための解説である。
 全6項からなる数式の足し合わせによって、宇宙のすべてが分かるという。ただし、ダークマターは数式の内には入っていないし、ダークエネルギーは宇宙項として組み込まれてはいるがその正体は謎である。
 今後の研究によってまだアップグレードされていくはずのものであるし、超ひも理論によって理論の統一がなされれば、これまで複数の項の足し合わせであったものが、たった一つの項にまとめられる可能性もある。


 第3部は物理学者へのインタビュー。
 大栗博司、橋本幸士、村山斉、南部陽一郎小林誠益川敏英梶田隆章といった、そうそうたるメンバーである。ただし、ノーベル賞受賞者の言葉は受賞後のインタビューのものであって、この本のために特別に話を聞いたわけではないようだ。
 最後に、大型加速器J-PARCの紹介。素粒子物理学は理論ばかりが先走っているようにも感じられるが、実験装置もまたものすごいことになっている。J-PARCでは陽子をほぼ光速にまで加速させる。発生したニュートリノ茨城県東海村から岐阜県神岡町まで飛ばして、ニュートリノ振動を観測したりもする。