本の覚書

本と語学のはなし

アメリカ・キリスト教史/森本あんり

 アメリカにおけるキリスト教は、その理念を背負いながら、歴史を動かし、歴史の中でもがきながら、未来を指向していく。
 黒人、女性、移民、異教徒などをめぐる、アメリカを分断する様々な問題も、常に同時にキリスト教に突きつけられる。いかなる問題もキリスト教を度外視しては、理解することも、解決することもできない。


 森本あんりの『アメリカ・キリスト教史』は小さな歴史書である。しかし、キリスト教を欠いたアメリカ史の記述が本来不可能なものである限り、アメリカの理解のためにはぜひ参照されるべき本である。
 同時に、建国の理念が指し示す方へ未来の収斂点を求める、小さな神学書のようでもある。