本の覚書

本と語学のはなし

ダ・ヴィンチ・コード(下)/ダン・ブラウン

ダ・ヴィンチ・コード(下) (角川文庫)

ダ・ヴィンチ・コード(下) (角川文庫)

 ミステリーとしては今一つだが、薀蓄本としては楽しい。ただし、すべてを鵜呑みにしてはならない。聖杯探究者はどうも史料批判を等閑にする傾向があるようだ。

 さて、シオン修道会はイエスマグダラのマリアの血脈(聖杯のこと)、マグダラのマリアの墓、聖杯の真実を証明する文書(テンプル騎士団エルサレムの神殿で発見したという)を守るのだというが、後の二つはどこかに隠しておかなくてはならない。
 ふつうはスコットランドにあるロスリン礼拝堂に眠ると考えられているようだ。ロスリンはローズ・ライン(子午線)を語源とし、ライン・オブ・ローズ(薔薇の血筋)の意味をも隠し持っているという。地中探査レーダーの調査により、出入り口のない巨大な地下室が存在することが分かっている。しかし、ロスリン保存協会が発掘を禁じているため、今に至るまでその秘密は明らかにされていない。
 ラングドンの見つけ出した暗号も、確かに古のローズ・ラインの下に秘密が眠ることを示唆していた。しかし、それはロスリンのことではない。そこからは既に移動された後だという。ではどこにあるのか。ここで我々は、パリのサン・シュルピス教会の床に引かれた奇妙な線を思い出さなくてはならない(上巻でシラスがキー・ストーンを探しにきた教会だ)。パリの子午線、古のローズラインである。教会内にあるエジプトのオベリスクを通るその線を北に延長してゆくと、そこにはパリのピラミッドが存在するのである!