本の覚書

本と語学のはなし

北村薫の創作表現講義/北村薫


 早稲田大学で二年間行った表現の授業の一部を、紙上に再現したもの。いろんな表現分野の薀蓄、歌人や編集者をゲストに招いてのインタビュー。ヒントは盛りだくさんであるけど、決してテクニックを教えるわけではない。実際にものを書き、評論し合うという実践部分は省略されているから、読んだだけで書く力が身につくわけでもない。それを承知の上なら、とても楽しい本だ。
 聞く耳を持ち、蓄積をして、関連を見出し、あるいは連絡を通じさせること。要はそういうことだろうと思う。


 北村薫の小説は読んだことがない(講義の中で彼が名を挙げる人もほとんど読んだことがないが)。今後読むこともないかもしれない。こういうことが欠点になることは普通ないだろうけど、私には少し「開かれすぎている」という印象を受けた。