本の覚書

本と語学のはなし

『林檎の樹』


ゴールズワージー『林檎の樹』(渡辺万里訳、新潮文庫
 最初はただただ淡く甘い初恋の物語かと思っていたが、後半からそうでなくちゃいけないという展開になり、最後はさもありなんという結末が待っている。安定感は抜群だけれども、きっとこれはドイツロマン主義に耽溺していた十代の頃ならさぞかし夢中になって読んだだろうと思うと、だいぶんいとおしさを感じたりもする。
 イギリス上流階級の価値観と、古典への傾倒をそこかしこにあしらうこの小品は、原文で読めばもっと楽しいに違いない。

林檎の樹 (新潮文庫)

林檎の樹 (新潮文庫)