本の覚書

本と語学のはなし

「居酒屋」英国式小便

Ce qui semblait certain, c’était qu’un après-midi, sur la place de la Bastille, elle avait demandé à son vieux trois sous pour un petit besoin, et que le vieux l’attendait encore. Dans les meilleures compagnies, on appelle ça pisser à l’anglaise. (p.441)

これだけはほんとらしいけど、いつかの午後、バスチーユ広場で、ちょっと入用だからとあの子〔ナナ〕がじいさんに三スーせびったんだって、どころがじいさんはいまだにあの子を待っているそうよ。上流社会じゃあ、こういうのを、英国流に小便すると言うんだってね。(p.517)


 最後の表現について、注釈には〈pisser〉(小便する)は〈partir, filer〉(立ち去る)のことだと書いてある。当時の上流階級が本当に〈pisser à l’anglaise〉と言っていたのか、下流階級に伝わるに及んでいつしか言い回しが下品になって行ったのか、この話をした人間の個人的な勘違いなのかよく分からないが、当時の読者にはなにがしかの皮肉か滑稽さを感じ取らせたに違いない。
 辞書を見ると〈filer (partir, s’en aller) à l’anglaise〉、すなわちイギリス式に立ち去るとは、あいさつもせず黙って姿を消すことだとある。一方で、同じことをドーヴァー海峡の向こう側では〈to take the French leave〉と言う。同一の行動や事象をイギリス式と揶揄し、フランス式と蔑む例は、他にもあるだろうと思う。


 塾の1週目の授業が終わる。教えるものが3種類しかないので、だいぶ楽になった。本を読む余裕が出て来た。『居酒屋』も『自負と偏見』も10月中にはなんとか終わらせたい。
 学校の方の授業はまだ始まらないが、依頼されていた仕事に時間を取られる。依頼の仕方がずさんで2度もやり直しをしなくてはならなかったが、それを指摘しても自分の正当性を主張するだけで決して非を認めようとしない(一方で依頼文書を改善するための回覧文書が回っている)。私は経済的な理由であるとした上で、来年度の契約を更新しない旨を伝えた(代表者に直接言ってくれとのことなので、正式な意思の表明にはならないようだけど)。
 最近やたらにスパムが来る。仕事用の方だ。いくつかの履歴書にアドレスを書いたり、過去には翻訳会社や塾とのやり取りにも使ったが、今はもっぱら学校との連絡にのみ使用している。