●マーク・ピーターセン『日本人の英語』(岩波新書)
日本人が間違えやすいところを重点的に解説してくれる。とりわけ前半の冠詞、名詞の数、前置詞の説明から何も得るところがない日本人など存在しないのではないか。
著者はある日、アメリカ留学中の日本の友人から手紙を受け取った。そこには「Last night, I ate a chicken in the backyard.」という文章が書かれていた。これが間違いない英文だとしたら、どうだろう。
夜が更けて暗くなってきた裏庭で、友だちが血と羽だらけの口元に微笑を浮かべながら、ふくらんだ腹を満足そうに撫でている――このような生き生きとした情景が浮かんでくるのである。(11頁)
まあ普通は、裏庭で鶏を捕まえ、そのままむしゃむしゃ食べてしまうことはないだろうから、これは「I ate chicken」の間違いだろうと著者は判読する。それが正しい推理であることを私も祈る。
英語で話すとき――ものを書くときも、考えるときも――先行して意味的なカテゴリーを決めるのは名詞でなく、a の有無である。そのカテゴリーに適切な名詞が選ばれるのはその次である。(12頁)
こんなことは普通、文法の本にも載っていないし、学校でも教えてくれない。ユーモアの後には、目から鱗の説明が待っている。
英語の説明も素晴らしいのだが、著者の日本語能力にも驚かされる。それだけでも読む価値がありそうだ。
- 作者:マーク・ピーターセン
- 発売日: 1988/04/20
- メディア: 新書