本の覚書

本と語学のはなし

『富井の古典文法をはじめからていねいに』


●富井健二『富井の古典文法をはじめからていねいに』(東進ブックス)
 順番からいうと『古文読解』*1の前に読むべき本。私は昔文法マニアだったので飛ばしたのだが、読解に必要のない文法のための文法や微妙な細部などは、もう錆びついたり抜け落ちたりしている気がしたので、戻ってみた。
 やっぱり確認してよかった。例えば、「僕は知りません」という時の「は」は現代日本語文法では副助詞であるけど、古典文法では係助詞に分類される。係り結びにはならないけど、なぜかそうなのだ。しかし、読解の上ではどうでもいい知識だ。当然こんなことは忘れていた。
 品詞や意味の効率的な判別方法があるのを知ったのは驚きであるし、教えるときにも役立つだろう。ただ、あまりにごろ合わせが多すぎてかえって混乱しそうな気はする。もっと文脈重視でもいいのではないか。
 付属のCDを聞いたら、私の我流の活用記憶法とは違っていた。例えば形容詞なら、私は「くぅくぅしぃきぃけれ、からかりかるかれ」と2段に分けていたけど、「くぅからくぅかりしぃ、きぃかるけれかれ」というのが一般的な覚え方らしい。助動詞「き」であれば、私は単に「せぇきぃしぃしか」と唱えるだけで、連用形と命令形が抜けている事実は別に記憶していたのだが、普通は「せぇ○(まる)きぃ、しぃしか○(まる)」と覚えるようだ。人に教えるならやはり我流を封印しなくてはいけない。


 読み終わってすっきりした。面倒くさいからもう古典は道元や兼好以外読まなくていいやと思っていたのだけど、物語であれ日記であれ何であれ読みこなせるんじゃないかという気がしてきた。
 手始めに『枕草子』に挑戦する。小学館の現代語訳と注釈つき全集のやつを持っている。これでちょっと様子を見ながら実力診断をしてみよう。

『小論文これだけ! 超基礎編』


●樋口裕一『小論文これだけ! 超基礎編』(東洋経済新報社
 本当はただの『小論文これだけ!』を買うつもりだったんだけど、間違って『超基礎編』の方を選んでしまった。装丁もほとんど同じみたいだし、「短大・推薦入試から難関校受験まで」ってカバーに書いてあるし、『超基礎編』が出ているのを知らなかったし、全く疑うことなく買ってきたのだった。実に紛らわしい。
 でも、くどいほど基本が繰り返されているので、読むだけで小論文の典型的な型が身に付くし、現代社会を考えるための最低限の知識も仕入れることができる。中高生に国語や公民を教える時も小論文的な発想を意識しておくのは重要かと思うけど、そういう目的のためにも、このくらいのレベルでちょうどよさそうだ。それに、高度な内容は一緒に買った『小論文を学ぶ』の方で確認できる。失敗ではなかったようだ。

小論文これだけ! 超基礎編

小論文これだけ! 超基礎編