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本の覚書

本と語学のはなし

沈黙/遠藤周作

沈黙 (新潮文庫)

沈黙 (新潮文庫)

 遠藤周作の本で今まで読んだことがあるのは、『イエスの生涯』『キリストの誕生』『深い河』と二三のエッセイ集のみで、『沈黙』はこれが初めてである。
 基本的には同じようなイエス像が語られる。栄光に満ちたキリストではなく、力なく威厳もなく、薄汚れて共に苦しむイエスである。

「主よ。あなたがいつも沈黙していられるのを恨んでいました」
「私は沈黙していたのではない。一緒に苦しんでいたのに」
「しかし、あなたはユダに去れとおっしゃった。去って、なすことをなせと言われた。ユダはどうなるのですか」
「私はそうは言わなかった。今、お前に踏絵を踏むがいいと言っているようにユダにもなすがいいと言ったのだ。お前の足が痛むようにユダの心も痛んだのだから」
 その時彼は踏絵に血と埃とで汚れた足をおろした。五本の指は愛する者の顔の真上を覆った。この烈しい悦びと感情とをキチジローに説明することはできなかった。(p.294)


 方言や外国語には注釈があるとありがたいのだが、そういうものは一つもついてない。
 270ページに「フェレイラからもらったが、日葡辞書をみると、盆祭りのことをhet-sterffestと訳していたことを何となく思い出す」とある。しかし、これはポルトガル語ではない。よく分からないけど、オランダ語ではないだろうか。hetは定冠詞、sterfは死、festはフェスティバルのことと思われるのである。こういうところは専門家の解説が必要である。

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