本の覚書

本と語学のはなし

本ができるまで/岩波書店編集部編

 第1章はグーテンベルクから現代までの印刷技術の発展。凸版印刷から凹版印刷、平版印刷、そしてオフセット印刷へという流れを概観する。
 資料の図版がたくさんあるのはいいのだけど、仕組みをもっとイラストで紹介してくれるとなおありがたかった。

 第2章では、岩波ジュニア新書を印刷している精興舎に取材し、現代の印刷が実際にどのように行われているのか、その工程をたどる。
 その前史としての、活版印刷の頃の文選や植字(ちょくじ)の話が面白い。

 第3章は製本の話。紙は3回折ると8枚16ページの冊子になる。これを重ねて糊付けし(今では糸でかがる本は限られているようだ)、並製の本(ペーパーバック)であれば表紙を付けた後もろともに三方を切り落とし*1、上製(ハードカバー)であれば三方切り落とした後で表紙を付ける。
 で、早速自分でも紙を折り、背をホチキスで留めて、袋になったところをカッターで切り、16ページの小冊子を作ってみたり、この本でも本当に16ページずつが1つの冊子になっているか確認してみたりした。

 コラムもいくつかあるのだけど、紙に裏表があるだけでなく、目まであるということは初めて知った。
 水で薄められた紙料は、漉き網の上に流されつつ脱水される。その時網側になっていた面が裏で、その反対が表。紙料の流れる方向に沿って繊維の目が生じる。
 本のように両面に印刷される場合には、裏表をなるべく均質にしなくてはならない。また、本を開く方向に目があると紙が突っ張って開きにくい。普通はこのような本を作ってはならないのである。


 『本の歴史』の足りないところを補ってくれる良書だった。確かに『本の歴史』以降の歴史はほとんど色気のないものだけど、本好きならば一応は押さえておきたいところであった。

*1:切らないと袋状のページができてしまうからだが、岩波文庫のようにあえて天を切り揃えない場合もある。