本の覚書

本と語学のはなし

ギリシア語入門/田中美知太郎・松平千秋

ギリシア語入門 改訂版 (岩波全書 137)

ギリシア語入門 改訂版 (岩波全書 137)

 説明は実にそっけないが、必要なことは大体書いてある。アクセントや間接話法の話などは、特に参考になった。私は古川晴風の『ギリシヤ語四週間』(大学書林)を終えてからは、専らSmythしか使ってこなかった。英語の記述を読むのは面倒くさいので、たいてい文法表を眺めるだけで調べ終えたことにしてしまう。いつしか重要なはずの知識さえ忘却されていく。こうして私のギリシア語はだいぶいびつに歪んでしまっていたのである。

 しかし、あまりお薦めはできない。
 先ず独習に向かない。説明が簡単な分を練習問題で補う体裁なのだが、解答がついていない。和訳には多少の注があるけど、初学者には全く足りないだろう。私も和訳には半分ほど目を通したが(希訳には手をつけなかった)、後半は気力が萎えて問題は飛ばしてしまった。
 それから、漸進的な構成だから仕方ないとはいえ、後から参照しにくい。この本は昔から持っているが、これで調べ物をしたことはほとんどないし、今後もすることはないだろう。
 最後に文法表が見にくい。初学者が何度も確認しなくてはならない動詞の活用が、殊に不親切な配置になっている。少なくとも私にとっては、甚だ記憶に定着させづらいように思える。

 日本語の体系的な文法書も持っていた方がよいということは分かった。ちょっと高いが高津春繁の『ギリシア語文法』(岩波書店)を入手するしかなさそうだ。


【新装版】*1

ギリシア語入門 新装版

ギリシア語入門 新装版

*1:私が持っているのは岩波全書のものだが、今はサイズの大きな新装版が出ている。ただし、旧版を拡大しただけで内容は全く変わらないらしい。